ワタミの業績回復とブラック企業大賞 ~外食業界の評判管理~

ワタミの業績回復とブラック企業大賞 ~外食業界の評判管理~

ブラック企業の象徴「ワタミ」

ブラック企業の象徴「ワタミ」

過労自殺や懲戒解雇をめぐり批判が噴出、「ブラック企業」のイメージがすっかり定着した感のあるワタミ。2015年3月期に128億円の最終赤字を計上するなど一時は深刻な経営不振に陥りながら、倒産寸前とまで言われた業績はここ数年でV字回復を果たしてきています。

一度地に堕ちたブランドは、いかにして回復できたのでしょうか。

居酒屋や外食産業での風評対策、ウェブ評判管理を語るにあたり、業界のリーディングカンパニーであり、良くも悪くも外食ビジネスの象徴的な存在であるワタミを避けて通ることはできません。
ワタミブランドの毀誉褒貶を辿ることで、ブラックといわれがちな外食産業が直面する課題や適切な評判管理、風評対策のあるべき姿が見えてくるようにも思われます。

本稿では、ウェブ評判管理の視点からワタミの経営不振とそこからの回復について論じてみたいと思います。

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ワタミと「ブラック企業大賞」

ワタミ株式会社は、創業者の渡邉美樹氏によって1986年に設立され、当初は「つぼ八」のフランチャイズとしてスタートしました。
4年後の1992年に自社ブランド「和民」の1号店を笹塚に出店したのを皮切りに次々と直営店舗をオープン、若者のコンパや宴会需要を取り込みながら順調に事業を拡大してゆき、2000年には東証一部上場を果たします。

2005年ごろから中国や台湾への出店を開始、海外事業を本格化させる傍ら、翌年の2006年には介護事業に進出し、ワタミの介護株式会社を立ち上げるなど矢継ぎ早に多角経営をスタートさせます。
本業の傍ら、代表の渡邉氏が都知事選に打って出るなど順風満帆そのものに見えていましたが、そのころから賃金未払い問題が各所で噴出、労働基準監督署から是正勧告を受けるなど数々の問題がクローズアップされるようになっていきました。

そんなワタミが、「ブラック企業大賞」の第一回市民賞を図らずも受賞したのが2012年のことでした。
そもそも「ブラック企業」という用語は2000年代前半、派遣法施行に伴い非正規雇用者が誕生し、雇用の在り方に大きな格差が生まれたあたりから2ちゃんねるを中心に使われだした言葉だと言われています。当初はネットスラングであったものが、過労死やサービス残業問題が各所で噴出しだした2000年代後半には広範な社会問題としてマスコミにも取り上げられるようになりました。その一つの象徴的出来事がブラック企業大賞の設立というわけです。

2012年の第1回で大賞を受賞した東京電力はその前年、福島原発問題を起こしているため別格的な選出としても、ワタミが市民賞、「すき家」のゼンショーホールディングスが特別賞を受賞している点は注目に値するでしょう。つまり、設立当時からすでに外食産業はブラックな業界として広く認知されていたということです。
なかでもこの受賞によって、ブラック企業としての「ワタミ」のイメージはぬぐいがたいものになりました。ブラック企業の特集がテレビや雑誌で組まれるたびに必ずといっていいほどその名があがることで、ブラック企業=ワタミのイメージが浸透していったのです。

ブラックの象徴、若者の敵ワタミの誕生というわけです。

渡邉氏へのバッシングと業績悪化

ワタミと「ブラック企業大賞」

数ある外食企業の中で、ワタミが「ブラック企業」として取り立ててやり玉にあげられたのはなぜでしょうか。
数々の集団食中毒、賃金未払いや過労自殺問題や訴訟を抱えていたこと、外食産業の雄として象徴的に扱われやすかったことなど、その理由はいくつか考えられますが、わけても代表の渡邉美樹氏のキャラクターによるところが大きかったのではないかと考えています。

企業にとって代表者の人柄や言動はその企業そのものといっていいほどの影響力をもちますが、ワタミについてもそれは例外ではありません。

渡邉氏はブラック企業大賞受賞の翌年にあたる2013年に参議院選挙に出馬し、比例区で当選した際にも過激な言動で炎上しましたが、氏はテレビ番組や雑誌インタビューなどで過激な発言をするたびに数々の炎上を繰り返してきました。氏は意図的に炎上させることで衆目を集め、お茶の間に話題を提供しているように見受けられるところもあり、炎上マーケティングの先駆者的存在であるといってもあながち過言ではないでしょう。

有名なものとしては2006年、テレビ東京の「カンブリア宮殿」に出演した際の次のような発言がありました。
渡邉氏は「よく『それは無理です』って最近の若い人達は言いますけど、たとえ無理なことだろうと、鼻血を出そうがブッ倒れようが、無理矢理にでも一週間やらせれば、それは無理じゃなくなるんです」と発言し、司会の村上龍氏を唖然とさせたことがありました。このあたりからすでに、渡邉氏は労働者を搾取するブラック経営者としての悪名をとどろかせ始めていたように思われます。

ブラック経営者としての渡邉氏、ブラック企業としてのワタミが広く人口に膾炙しはじめた時期と、それまで一貫して好調だった業績が下降線をたどり始めた時期が重なっているのは偶然ではないでしょう。
ブラック企業大賞を受賞した翌々年にあたる2014年、不採算店舗102店を閉鎖し上場以来初の営業赤字に転落すると、その後値下げや称号変更、経営陣の刷新にもかかわらず客離れの加速は避けられず、一時は倒産のうわさがでるほどの深刻な経営不振に陥ったのでした。

V字回復のための苦肉の新戦略

V字回復のための苦肉の新戦略

ワタミが深刻な経営不振から脱却するためにとった新戦略は、業界をあっと言わせるものでした。

それまで文字通り看板であった『和民』の屋号を廃し、順次「ワタミ」の名前を隠した新屋号『ミライザカ』『三代目鳥メロ』へと架け替えを行っていったのです。

このことはワタミの店舗数推移を見れば明らかです。2018年2月時点での国内店舗数は472店、そのうち『和民』『坐・和民』『わたみん家』など「ワタミ」を含む屋号が160店、新屋号『ミライザカ』『三代目鳥メロ』が225店に上ります。16年度末と比べると、和民系は145店減り、新屋号は135店増加しており、「脱和民」戦略、看板架け替え戦略は明確な目的を持って進められてきました。

そもそも「ワタミ」という名前は、創業者「ワタナベミキ」の頭文字からとられていること、直営を社是とし一貫してフランチャイズ展開をしなかったことなどからもわかる通り、経営陣からしてみれば並々ならぬ思い入れがあるブランド名だったはずです。

その象徴的な『和民』ブランドを捨て、ワタミであることを隠してまで新業態を模索しなければならなかった経営判断がいかに苦渋の選択であったかは想像を絶するものです。それだけワタミの経営不振が深刻で、のっぴきならない状況まで追い込まれていたということができるかもしれません。

ともあれ、ワタミ系列であることを隠す「脱和民」戦略は経営的には功を奏しました。
2017年4~12月期連結決算を見ると、営業損益が5億2500万円の黒字、最終損益が3億1700万円の黒字となり、両損益がともに黒字となるのは16四半期、実に4年ぶりのことになります。つまり新戦略へのかじ取りによって、2012年のブラック企業大賞受賞以来はじめての黒字に転換したのです。

もちろん、V字回復を達成した要因はひとえに『脱和民』にとどまらず、さまざまな企業努力の賜物であることは補足しておく必要があります。新規参入した宅配事業の成功や、新屋号における「190円アルコール」など低価格路線の奏功などの複合的要因があって初めて成しえたことであるのは明白でしょう。いずれにせよ、ブラック企業としての汚名を冠せられたこの七年間の業績推移を見れば、ブラック批判がいかに客離れを加速させたかは火を見るよりも明らかであり、ブラック=ワタミの存在を隠すことによってしか業績回復がありえなかったであろうことは想像に難くありません。

企業の評判管理がいかに重要か

企業の評判管理がいかに重要か

ワタミが業績回復のために行った看板架け替え戦略は、どこの企業でもまねのできることではないどころか、企業の評判管理やブランディングの視点で見たときには次善の一手に過ぎず、本来ならばあってはならないことであることは肝に銘じておかねばなりません。

ワタミのブラック批判はウェブから始まり、社会現象にまで広がっていきました。コンプライアンスや労働環境整備をはじめ、代表者の言動により一層気を配ること、ウェブでの評判管理を行い、つねに自社がウェブでどう見られているのかを適切に把握しておくこと、これらを早期のうちに行っていれば「ワタミ」というブランドは地に堕ちずに済んだはずなのです。

ウェブでの評判が悪化することで社名を変えたり、ワタミのように社名を隠した経営を余儀なくされたりといった事例は枚挙にいとまがありません。
ワタミの失敗を繰り返さないためにも、つね日ごろから適切な評判管理に注意を払うべきなのは明白です。そのためにはまず、自社のウェブでの評判を適切に把握することからはじめるべきでしょう。ワタミの轍を踏まないためにも、早期の対策が望まれます。